笑顔ときどき涙 | ayakoの子育て体験記

Ayako 子育て体験

「知恵遅れ」と言われた日

   

 うちの息子Katuoは、3歳を過ぎてもほとんどお喋りが出来なかったんです。
その当時通っていた保育園の先生にも何度も相談していましたが、帰ってくる返答は、
「個人差があるから、もう少し様子みていいんじゃないかな?」
最初はその言葉で安心出来ていたんです。でも、3歳を過ぎた頃から何か違うと感じはじめました。
うちの子は5月生まれで、同じクラスの月齢が一番小さい子もお話が上手になってきている。何かがおかしい…。
耳は聞こえている、目線も合う、おいでとジェスチャーすれば来る、欲しい物を指差しする。
でも、何度言葉を教えても喋らない…。

 どきどきしながら行った3歳児検診で、今でも忘れる事の出来ない一言を医師に言われました。
「この子はいわゆる知恵遅れだね。まだ喋らないんでしょ?このあと保健士さんのとこ行って。」
たった2分程度の診察で、知恵遅れだとはっきり言われたんです。
頭が真っ白になった経験は初めてでした。
ショックな気持ちと、同じ医療関係者という立場から、あんな言い方してよいものなのか?という怒りの気持ちが溢れました。
気づくと、保健センターの待合で息子を抱きながら泣いていました。
そのあと、保健士さんから言葉の発達に関するお話を聞き、簡単な言語発達状況のテストをされました。
そして、地域の発達支援センターという所で、専門の方とお話するよう勧められました。
色々お話されたけど、この日のことはあまりよく覚えていないんです。医師の言葉以外。
今でも思い出すと、涙が出てきます。

 初めて発達支援センターに行ったのは、それから2~3カ月後の事です。
実は、息子は検診の後から少しづつですが簡単な単語、いわゆる一語文を話すようになったんです。
支援センターへ伺った時、全く話せなかったわけではなかったので、半年に一回のペースで支援センターへ行くことになりました。
あれから1年ちょっとの月日が経ちました。今ではペラペラとお話しています。

 
 つい最近の事ですが、ケータイ電話を新しくしようと思い、ケータイショップに行ったある日のこと。
真面目そうな、中年の男性が担当してくれました。最初はとっつきにくい方だなぁ…と思っていましたが、手続きも終盤になったころ、
「下のお子さん、おいくつですか?」と突然聞いてきました。
「4歳なんですよ。」と答えると、
「あぁ、やっぱり。うちの子と近いです。下に産まれたばっかりの子がもう一人いるんですけどね。」
営業していたサラリーマンの顔から、父親の優しい顔に変った彼はこう続けた。
「いいなぁ、おしゃべりが上手で…。うちの子、まだあまり喋らないんですよ。私も妻もすごく心配で…。」

 ドキッとしたのと同時に、私たちが経験した色々なことを全部お話ししてあげたかった。
なぜなら、その気持ちがすごく分かるから。
奥さんの気持ちや、彼の気持ち、お喋りの出来ない我が子を見守る気持ちや、他人の子が上手にお喋りしているのを我が子と比べてしまう気持ち。

 でも、その場はケータイショップ…長々お話出来るわけではなく、
「うちの子も、3歳過ぎても全然話せなかったんですよ!大丈夫ですよ!」
そんなありきたりな事しか言えず、とてももどかしい気持ちになりました。
あの頃の私たちのように、同じような悩みを持った人達がいることに気づかされた出来事でした。

 伝えてあげたい、同じ想いをしている人がいることを。
伝えてあげたい、私たちはこんな経験をしたんだよ、ということを。
伝えてあげたい、心無い事を言う人もいるけれど、我が子の力を信じてあげて欲しいということを。

 
 私自身、たくさん泣きました。主人いわく1か月間くらい私から笑顔が消えていたそうです。

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